和田みつひと 写真作品 /Mitsuhito Wada photographic works, 2020

「水を想う、水が想う」『絵画を考える ―水を描く―』工房 親(東京),Tokyo

「水を想う、水が想う」2020

 390×585 mm、印画紙、発色現像方式印画


水を想う、水が想う」和田みつひと

 工房 親(東京)にて開催する、シリーズ企画 第11 回「絵画を考える」― 水を描く― 展に参加によせて。

 

近年、スライド画像での提示や、インスタレーション作品と組み合わせて写真映像を発表しています。光の存在を手がかりに撮影する際に、水面をモチーフにすることが少なくありません。展覧会にお誘いいただき、「水を描く」というテーマに則り、水面を撮影した写真を 2 枚選び組み合わせました。2 枚の写真を組み合わせ展示することで、「水」を想う(見る)と同時に、「水」に想われる(見られる)、各々が相互関係にあり、主客が同一にある状態を表現したいと考えました。

 

大学時代は日本画を専攻し、卒業後「絵画とは?」という問題意識から始まった制作は、光と色のインスタレーション作品へと展開しました。そして、光そのものの効果によって生み出される写真映像の利用は、「見ること」と「見られること」との関係の考察という、これまでの制作の主題と通じるものがあると考えています。そして、写真作品の制作を、主体と客体の同一性、及び抽象性と純粋な感覚性への志向による試みと考えると、そもそもの制作テーマである「絵画を問う」という問題意識と連続していると考えています。「絵画を考える」ことは、制作における根源テーマと言ってもよいでしょう。そして、まさしく絵画は、「美術」であり、「美」を問う「術」なのでしょう。

 

これまで、スライド映像作品の発表を前提として制作していました。ミラーレスカメラで撮影し、撮影したデジタル画像を液晶画面で確認し、スライド映像に仕立てる制作は、いわばデジタル作業に完結した作業です。今回の作品は、ディスプレイ表示された発光する画像から、光が反射することで見える印画紙上への移行の作業です。モノとしての写真作品(紙焼き作品)として発表するということで、より写真の諧調表現に苦心しました。

 

コロナ禍の中、誰もが人と世界との関係、その在り方を考えざるを得ない状況に直面しています。このような状況下で何が出来て、何を為せるのか、何を為したいのかを丁寧に考察と試行を繰り返し、制作を深化させたいと考えています。インスタレーション作品と写真作品、各々の表現を深めると同時に、それらを融合させることによって、新たな作品を提示していきたいと考えています。