和田みつひと 作品 /Mitsuhito Wada Works 2013 ~

「 The garden of inside 」

『BUILDING DIGNITY』北九州インスタレーションプロジェクト

会場:吉川精密株式会社内 旧東京製綱小倉工場赤煉瓦事務所棟

主催:北九州インスタレーションプロジェクト実行委員会

 

 

「The garden of inside 」和田みつひと

 

今では忘れ去られていた建築や場所を喚起することは、同時にその建築や場所の時代的背景や歴史をも喚起することになるだろう。ある特定の場所や建築を喚起する契機としてあることも、アートプロジェクトを行う意義のひとつであり、その魅力であろう。

 

『BUILDING DIGNIT』の活動は、北九州市を拠点として活動する建築家・アーティスト・デザイナー・研究者などにより構成された北九州インスタレーションプロジェクト実行委員会が主催するアートプロジェクトである。プロジェクトの対象となったのは、旧東京製綱小倉工場の赤煉瓦事務所棟である。この建物は、東京に本社のあった東京製綱の九州地区の拠点として、1906年(明治39年)に竣工した。北九州市小倉北区の中心部からも近いこの工場では、主に筑豊炭田の炭鉱の捲揚機用のワイヤロープを製造していた。その後、敷地は東京製綱から吉川工業株式会社に譲渡され、事務所棟と倉庫棟の二棟の赤煉瓦建築が現存している。現在は吉川工業グループの吉川精密株式会社の工場敷地内であることから、通常は公開されていない。明治時代以降の国の近代化を支えた歴史的建築物に再び光を当て、「建築の尊厳を(再)構築する」活動の一環として『BUILDING DIGNIT』展が開催され、会場として旧東京製綱小倉工場の赤煉瓦建築が初めて一般に公開された。

 

 

私の参加作品は「The garden of inside」と題して、緑色の透明PVCフィルムを窓ガラスに貼り、装飾天井の梁の菱形に呼応し、緑色の照明用フィルタを巻いた蛍光灯を正方形に配置した。緑色のフィルムは外から建築を見るとき、補色である赤煉瓦の色を際立たせた。また、緑色に染まった作品内部の体験を通して、補色残像の効果で、外部の様子がより鮮やかに赤みが増して見えて来た。会場となる建築本来の姿の喚起を試みた。明治期に建造された赤煉瓦建築でのプロジェクトであること、「建築の尊厳を(再)構築する」という明快な展覧会コンセプトが、光と色による還元的な手法で場所を喚起することを試みている私にとって、とても興味深い展覧会だった。初めは廃墟のような場所が、多くの人の手が加わることで、次第に建築らしさを取り戻し、あたかも建築そのものが次第に息を吹き返す様子を垣間見ることになった。そして、外部からの参加者である私自身が、会場となった建築や地域に想いを馳せることが出来た。

 

 

 

『BUILDING DIGNITY』北九州インスタレーションプロジェクト01

2013年11月16日(土)−11月24日(日)

  • 協賛:吉川工業株式会社、吉川精密株式会社、西日本工業大学
  • 助成:北九州活性化協議会
  • 協力:北九州まちづくり応援団株式会社、株式会社鎚絵
  • 後援:北九州商工会議所、We Love 小倉協議会、路上観察学会小倉支部、北九州まなびとESDステーション

 

 

『BUILDING DIGNITY』北九州インスタレーションプロジェクト02

2014年10月25日(土)—11月3日(月)

 

 

ウェブページ:http://buildingdignity.jp