Photo:福田龍郎 Ryuro Fukuda
「replace it for the life」 和田みつひと
プロジェクトの会場となった「or'est」は、ベルリンのプレンツラウアーベルクにある彫金のアクセサリーショップである。店は並木道に面してガラス張りで、店の奥にはアクセサリーを製作する工房がある。この展示は、通りに面した店内と店外を仕切るガラス面と工房のガラス窓に、透明ピンク色のPVCフィルムを貼った。ガラスに貼ったフィルムを透過し反射する光によって、いつもと同じ佇まいを見せながらも、その場所で見られるものとは異質な光景をつくりだした。
日頃、私たちには、見ているようで見逃しているものが、日々の生活の中に溢れかえっている。それは、あまりにも当たり前に在るがために気に留めていないだけである。いったい「見る」という行為とは、どういうことなのだろう。ただ目に入って「見えている」ということと能動的に「見入る」ということは、まったく違うことだ。
この作品によってつくりだされる光景は、ガラス面に貼ったフィルムの効果によって、普段とは異なる色彩を帯びて見える。その光景を構成するもの ー 店の中のショーウインドウ、イスやテーブル、そして工房内での製作現場 ー は、普段と何ら変わることはない。ここで試みたのは、展覧会の会場に訪れる人の体験をとおして、目の前にある光景と向き合う場をつくりだすこと。日頃見慣れてしまった気に留めていないものに気づくきっかけをつくりだすことである。
■オープニング・イベント
会期:5月27日(金)
出演:森本誠士(サウンドパフォーマンス)